『キングダム』を第1話から改めて読み返して振り返っていくシリーズ。
今回は第10話「油断」です。
前回の第9話では、政から山の民について聞いた河了貂が、自分自身の過去を思い返していました。
しかし、その背後には新たな刺客・ムタの姿が。
第10話では、そんな河了貂のルーツが少し描かれるとともに、信とムタの戦いがついに始まります。
そして今回のタイトルは「油断」。
何に対する油断なのかは、最後まで読むと非常に分かりやすい回になっています。
河了貂は山民族の末裔だった
第10話の冒頭では、河了貂が自分自身の過去について思い返します。
政から山の民について聞いたことで、河了貂自身も山民族の末裔であることが改めて描かれます。
キングダムを長く読んでいると、個人的にかなり忘れていた設定でした。
というのも、後の河了貂といえば、
「飛信隊の軍師」
というイメージが圧倒的に強いからです。
昌平君のもとで軍略を学び、飛信隊へ加入してからは、信を軍略面から支える重要人物になります。
そのため、初期に描かれていた河了貂の出自については、かなり印象が薄くなっていました。
第1話から読み返してみると、
「そういえば河了貂にはこんな設定があったな」
と改めて気づかされます。
こういう細かな発見があるのも、長期連載作品を最初から読み返す面白さですね。
初期の河了貂といえば「蓑虫」
そして初期の河了貂といえば、やはりあの独特な格好です。
信から「蓑虫」と呼ばれる、全身を覆うような衣装。
キングダムを途中から読んだ人が初期の河了貂を見ると、
「これが後の飛信隊軍師?」
と思ってしまうくらい、現在とは印象が違います。
物語が進むにつれて河了貂は軍師として成長し、見た目も大きく変わっていきます。
現在の姿を知ったうえで初期を読み返すと、この蓑虫姿もかなり懐かしく感じます。
ただ、この服装と河了貂の山民族としての出自にどこまで直接的な関係があるのかなど、細かな設定については私が確認した範囲では明確ではありません。
そのため、ここでは「山民族だからこの格好をしている」とまでは断定しないでおきます。
河了貂の背後に迫るムタ
本題に戻りますが、そんな河了貂ですが、本人は重大な危機に気づいていません。
背後からムタが迫っています。
ムタは政を暗殺するために送り込まれた刺客。
前回から登場していましたが、その独特な見た目もあって、かなりインパクトのあるキャラクターです。
河了貂は完全に無防備。
このままムタに襲われるかと思ったところで信がその気配に気づきます。
信はすぐに動き、河了貂を助けます。
そしてここから、信vsムタの戦いが始まります。
信の察知能力はこの頃から高い?
ここで少し気になったのが、信がムタの存在に気づいたことです。
この頃の信は、まだ本格的な戦場を経験していません。
それでも危険が迫った瞬間に反応し、河了貂を助けています。
後の信は数々の戦場を経験し、武将として成長していきます。
特に物語が進むと、信の戦場における感覚や直感が重要になる場面も出てきます。
もちろん第10話のこの場面だけを根拠に、後の信の能力につながる伏線だったと断定することはできません。
ただ、読み返してみると、
「信って最初からこういう危険に対する感覚は鋭かったんだな」
と思える場面ではあります。
ムタを見て完全に油断する信
河了貂を助けた信は、そのままムタと対峙します。
しかしムタを見た信は、相手をそれほど強いとは考えません。
体格や立ち振る舞いを見て、
「こいつなら簡単に倒せる」
というような感覚で戦いに入ります。
ここが今回のタイトルである「油断」につながっているのでしょう。
考えてみれば、信が油断するのも分からなくはありません。
信は漂と長年にわたって剣の修行を続けてきました。
そして実戦でも、すでに王弟側から送り込まれた刺客を倒しています。
さらにムタは、見た目だけなら圧倒的な武将という雰囲気でもありません。
信の中にも少しずつ、
「自分は強い」
という自信が生まれていたのかもしれません。
ところが――。
その判断は完全に外れます。
「見た目で相手の強さを判断するな」という最初の経験
信が攻撃を仕掛けると、ムタは予想以上の速さで動きます。
そして信は初手から攻撃を受けてしまいます。
ここで第10話は終了。
まさに、
「油断したらやられた」
という非常に分かりやすい終わり方です。
しかし、後の信を知っている状態で読むと、この失敗も面白く感じます。
これから信が向かう戦場には、とんでもない人間が次々と登場します。
見た目からして怪物のような武将もいれば、一見するとそれほど強そうには見えない人物もいます。
武将の強さは、単純な体格だけでは判断できません。
ましてや信は、これから秦だけでなく六国の強者たちと戦っていくことになります。
そんな信にとってムタとの戦いは、
「自分の物差しだけで敵の強さを判断してはいけない」
という最初の経験の一つだったのかもしれません。
この頃の信は、まだ「強い少年」
キングダムを現在まで読んでいると、信を一人の武将として見てしまいます。
しかし第10話まで戻ると、まだ本当に何も持っていません。
軍もいない。
兵もいない。
階級もない。
戦場経験すらない。
持っているのは、漂とひたすら鍛えてきた剣の腕と身体能力。
そして、
「天下の大将軍になる」
という途方もない夢だけです。
だから当然、経験不足から失敗もします。
ムタを見た目だけで判断して攻撃を受けてしまう今回の展開は、そんな「まだ完成していない信」がよく分かる場面でもあります。
後の巨大な戦争を指揮する信を知っているからこそ、こうした序盤の未熟さを見るのも面白いですね。
ムタは序盤の信にとって重要な相手?
朱凶に続いて信が戦うことになるムタ。
現在のキングダムから考えると、それほど大きな存在には見えないかもしれません。
しかし序盤の信にとっては、意外と重要な相手だったのではないでしょうか。
これまで信が積み重ねてきたのは、主に漂との剣の修行です。
しかし実戦では、相手が自分と同じように正面から剣を振ってくれるとは限りません。
体格も違えば、武器も違う。
動きも違う。
戦い方そのものが違います。
ムタは信にとって、自分が経験したことのない戦い方をする相手です。
これから数え切れないほどの強敵と戦っていく信にとって、こうした経験の一つ一つが武将としての土台になっていったと考えると、第10話の戦いも少し違って見えてきます。
河了貂も、まだ自分の道を見つけていない
そして、もう一人忘れてはいけないのが河了貂です。
後には軍師になる河了貂ですが、この時点では当然そんな未来を知りません。
黒卑村で生き抜いてきて、偶然のような形で信と政に出会い、一緒に行動しているだけです。
信には「天下の大将軍」。
政にはさらに大きな目標があります。
しかし、この時点の河了貂にはまだ明確な目標がありません。
だからこそ、第1話から読み返していくと、
信、政、河了貂の3人がそれぞれ自分の道を見つけていく物語
として見ることもできます。
信は武将へ。
政は中華統一を目指す王へ。
そして河了貂は軍師へ。
まだ何者でもない3人が一緒に旅をしている初期キングダムは、現在とはまったく違った魅力があります。
第10話「油断」まとめ
第10話では、河了貂のルーツが描かれるとともに、信とムタの戦いが始まりました。
今回特に印象に残ったポイントは、
● 河了貂が山民族の末裔であること
● 後の軍師姿とは大きく違う初期の河了貂
● ムタの気配にいち早く気づく信
● 見た目からムタを弱いと判断してしまう信
● 予想以上のムタの速さに対応できず、いきなり攻撃を受ける展開
といったところです。
初めて読むと、ムタという新しい敵との戦いが始まる回。
しかし後のストーリーまで知ったうえで読み返すと、信と河了貂がまだ成長途中だったことがよく分かる回でもあります。
特に現在では飛信隊の軍師として定着している河了貂のルーツが語られているのは、完全に忘れていた部分でした。
そして信もまた、まだ経験不足。
相手を見た目で判断して油断し、いきなり攻撃を受けてしまいます。
天下の大将軍を目指す少年も、この頃はまだまだ未熟です。
こうした小さな経験を積み重ねながら、現在の信へ成長していく。
それを知っているからこそ、第1話から読み返すキングダムはやはり面白いですね。
次回は第11話。
ムタとの戦いが続く一方、政と河了貂の「二人の対話」にも注目です。
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