マンガ

キングダム振り返り 第9話「山の民」|穆公と山民族の物語が後の重要な伏線に

『キングダム』を第1話から改めて読み返して振り返っていくシリーズ。

今回は**第9話「山の民」**です。

前回、昌文君との合流地点である古い秦王の避暑地へ到着した信・政・河了貂。

第9話では大きな戦闘はなく、3人が食事をしながら、この場所にまつわる昔話を聞くところから始まります。

そこで登場するのが、約400年前の秦王・穆公(ぼくこう)。

政は穆公と山の民との関係について信と河了貂に語ります。

初めて読んだときには「秦の昔話」くらいに感じていたかもしれません。

しかし後の展開を知ったうえで読み返してみると、

「これ、かなり重要な前振りだったんだな」

と気づかされる回です。

昌文君との合流地点へ到着した3人

第8話の最後で、信・政・河了貂は昌文君との合流地点へ到着しました。

そこは、かつて秦王が使っていた避暑地。

しかし、信と河了貂には当然そんな場所の歴史は分かりません。

河了貂が用意した食事を食べながら、政からこの場所について説明を受けます。

ここまでの3人は、王宮から逃げて刺客と戦いながら移動を続けてきました。

そのため、第9話は少し落ち着いた回でもあります。

そしてこの時間を使って、キングダムの世界が一気に広がっていきます。

これまでは、

「成蟜に奪われた秦王の座を政が取り戻す」

という比較的小さな範囲の話でした。

しかしここから徐々に、秦という国の歴史や山民族、そして中華全体へと物語のスケールが広がっていきます。

400年前の秦王・穆公

政が語るのが、約400年前の秦王である穆公です。

穆公は中国史に実在した秦の君主で、一般に春秋五覇の一人として数えられることもある人物です。

ただし「春秋五覇」の顔ぶれには複数の説があるため、穆公が必ず含まれると断定するのは正確ではありません。

『キングダム』の中でも、穆公は秦の歴史に残る名君として描かれています。

そして第9話で重要なのは、単に「昔の偉い秦王」が紹介されることではありません。

穆公が、

山の民との関係を築いた王だった

ということです。

愛馬を食べた山の民に酒を振る舞った穆公

政が語る穆公のエピソードの中でも印象的なのが、愛馬にまつわる話です。

穆公の大切な馬を山の民が食べてしまいます。

普通なら、王の愛馬を勝手に食べたとなれば厳しい処罰を受けても不思議ではありません。

しかし穆公は違いました。

彼らを罰するのではなく、むしろ酒を振る舞います。

このエピソードは、中国の歴史書『史記』にも、穆公の馬を食べた人々を処罰せず酒を与え、後に彼らが穆公を救ったという趣旨の故事があります。

『キングダム』では、この穆公の人物像と山の民との関係をうまく結びつけています。

ここで描かれるのは、

「力で従わせるだけが王ではない」

という姿です。

そして後の政を知っていると、この話を政自身が語っていることにも意味を感じます。

なぜ序盤で穆公の話が出てくるのか

今回読み返していて特に面白いと思ったのがここです。

物語が始まってまだ第9話。

主人公の信は、まだ兵士ですらありません。

政も王宮を追われた状態です。

そんな序盤で、わざわざ過去の偉大な秦王について語られています。

元記事でも書きましたが、個人的には政という王を描くための比較対象として穆公が置かれているように感じます。

後には昭王など、秦の歴史に名を残した王についても語られていきます。

偉大な先人たちが存在する中で、

嬴政はどのような王になるのか。

キングダムという物語では、この問いが非常に重要になっていきます。

もちろん「政との比較のために穆公を登場させた」という作者の意図が公式に明言されていると確認できたわけではないため、これは私自身の読み方です。

それでも後の展開まで知ってから読むと、かなり象徴的なエピソードに見えます。

「山の民」の話はすぐ後の展開につながっている

そして、第9話最大のポイントが山の民です。

初めて読んでいる段階では、

「秦には昔、山民族と交流した王がいたんだな」

くらいの情報に見えます。

しかし、このあと政たちは楊端和率いる山の民と接触することになります。

しかも政が王座を奪還するためには、彼らの力が非常に重要になります。

つまり第9話で穆公と山の民の関係を説明しておくことで、その後の展開につながる歴史的な背景が用意されているわけです。

後から読み返すと、

かなり分かりやすく伏線が置かれていた

ことに気づきます。

政と楊端和の関係の原点?

さらに先の物語まで考えると、ここはもっと面白くなります。

政と楊端和。

秦王と山の王。

この二人の関係は、その後のキングダムでも長く続いていきます。

山の民は一時的に王都奪還を手伝って終わる存在ではありません。

秦にとって非常に重要な勢力となり、楊端和自身も物語を代表する武将の一人になっていきます。

その関係の出発点をたどっていくと、第9話で語られた穆公と山の民の歴史へ行き着きます。

かつて穆公が山の民との関係を築いた。

長い年月を経て、今度は政が山の民と向き合う。

歴史がもう一度つながっていくような構成になっているところが面白いですね。

河了貂にとっても重要な「山の民」

そして忘れてはいけないのが河了貂です。

政から山の民について聞く河了貂。

実はこの話は、秦の歴史だけでなく河了貂自身のルーツにもつながっています。

この時点ではまだ詳しく語られませんが、次の第10話では河了貂が山民族の末裔であることが描かれます。

後の河了貂といえば、やはり飛信隊の軍師というイメージが強いです。

そのため長くキングダムを読んでいると、この初期設定はかなり忘れがちです。

しかし第9話から第10話を続けて読むと、

「山の民」というテーマが、

秦の歴史
→政の未来
→河了貂の過去

という複数の要素をつないでいることが分かります。

穆公の話を聞く信にも注目

一方、信も政から穆公の話を聞いています。

この頃の信は政治や歴史についてほとんど知識がありません。

王とは何か。

秦という国がどのようにできてきたのか。

他の国や民族とどういう関係があるのか。

そういったことを、政との旅の中で少しずつ知っていきます。

信の目標はあくまで、

「天下の大将軍になる」

こと。

しかし天下の大将軍になるということは、単に強ければいいわけではありません。

国を背負って戦い、他国や異民族とも向き合うことになります。

後の信を知っている状態で読むと、この頃の信が政からさまざまなことを学んでいる場面も、武将になるための最初の一歩に見えてきます。

穏やかな時間の裏で新たな刺客が迫る

穆公の話を聞きながら夜を過ごした3人。

しかし当然、このまま平和には終わりません。

翌朝。

河了貂の背後に、何者かが迫ります。

ムタです。

政を狙って南方から呼び寄せられた刺客。

前回までの刺客とはまた違った雰囲気を持つ、新たな敵が登場します。

河了貂はその存在に気づいていません。

山の民や穆公について語られる比較的穏やかな回だったところから、一気に緊張感が戻って第9話は終了します。

そして次の第10話「油断」で、信vsムタの戦いが始まります。

今読むと「説明回」ではなく「仕込み回」

初めてキングダムを読んだときには、第9話はそれほど派手な回ではなかった印象があります。

大きな戦闘もありません。

信が敵を倒すわけでもありません。

しかし改めて読み返してみると、かなり多くのものが仕込まれています。

穆公。

山の民。

河了貂のルーツ。

そしてこの先登場する楊端和。

さらに大きく見れば、

政はどんな王になるのか

というキングダム全体につながるテーマまで見えてきます。

そう考えると、第9話は単なる説明回ではなく、

これから物語を大きく広げるための「仕込み回」

だったのではないでしょうか。

第9話「山の民」まとめ

第9話では、昌文君との合流地点で、政から穆公と山の民についての話が語られました。

今回特に印象に残ったポイントは、

● 約400年前の秦王・穆公が登場

● 穆公と山の民との関係が語られる

● 後の政と楊端和の関係につながる前振り

● 河了貂自身のルーツにも「山の民」が関係している

● 新たな刺客・ムタが河了貂の背後に迫る

といったところです。

初めて読むと、秦の昔話を聞く比較的静かな回。

しかし後のストーリーまで知った状態で読むと、

「山の民との盟約へ向けて、ここから準備していたのか」

ということがよく分かります。

長期連載になったキングダムを第1話から読み返す面白さは、こういうところにありますね。

何気なく読み流していた会話が、何十話、何百話と続く物語の土台になっている。

そして次回、第10話「油断」では、今回語られた「山の民」が河了貂自身の過去へとつながり、新たな刺客・ムタと信の戦いも始まります。

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP