いつもの一杯が、昨日と少し違う。豆は同じなのに、今日は香りが華やかに感じられる。コーヒーを自分で淹れ始めると、そんな小さな発見が増えていきます。
コーヒーの面白さは、味を変える理由を考えられること。そして最後は、理屈だけでは決められない「自分の好み」にたどり着くことです。豆を選ぶところから飲み終えるまで、一杯の中にある科学と感性を見ていきましょう。
同じ「コーヒー」でも味が違うのはなぜ?
まず違いを生むのは豆そのものです。産地や品種に加え、収穫した実をどう精製するか、どの程度焙煎するかによって、香りや味の印象は変わります。果実を思わせる明るさがあるものも、チョコレートのような落ち着いた風味を感じるものもあります。
ただし、袋に書かれた産地や焙煎度だけで味が決まるわけではありません。同じ豆でも、挽き目や粉とお湯の量、抽出の仕方によって、カップの中のバランスは変化します。豆選びと淹れ方の両方に、自分で試せる余地があるのです。
産地から楽しみたい人は、エチオピアのコーヒーを紹介した記事から読んでみるのもおすすめです。
抽出は「正解探し」より、小さな実験
コーヒーを淹れるとき、お湯は粉からさまざまな成分を引き出します。その結果に関わるのが、挽き目、お湯の温度、粉とお湯の比率、接する時間などです。スペシャルティコーヒー協会(SCA)の抽出チャートも、抽出された成分の割合と飲み物の濃さを分けて捉えています。
ここで気をつけたいのは、「温度が高いと必ず苦い」「低いと必ず酸っぱい」といった単純な決めつけ。味は複数の条件の組み合わせで変わります。実際、ほかの条件を調整して抽出の濃さと割合をそろえたドリップコーヒーの研究では、試した温度範囲で官能評価の差は小さいという結果も報告されています。
だから、狙いは一度で完璧なレシピを当てることではありません。「今日は少し濃い」と感じたら、次は粉の量や挽き目を一つだけ変えてみる。結果を飲み比べると、次の一杯が楽しみになります。
まずは一つの条件だけ変えてみる
家で試すなら、同じ豆を使い、豆の量とお湯の量を毎回そろえるところから始めると違いが見えやすくなります。例えば次のように、簡単なメモを残します。
- 使った豆と焙煎度
- 粉とお湯の量、挽き目
- 飲んだときの印象をひと言(軽い、香ばしい、後味がすっきり、など)
次回は挽き目だけを少し変える。複数の条件を同時に動かさなければ、「どの変化が好みに近づいたのか」を考えやすくなります。数字は味を決めるためというより、気に入った一杯にもう一度出会うための手がかりです。
道具を選ぶ楽しさも、一杯の一部
ペーパードリップは後片づけがしやすく、フレンチプレスは粉をお湯に浸して抽出します。フィルターの違いはカップに残る成分にも関わるため、同じ豆でも口当たりの印象が変わります。道具を増やす前に、今ある器具で淹れ方を少し変えてみるだけでも十分楽しめます。
豆を挽くところから始めたいなら、コーヒーミルの違いと選び方も参考になります。粉の状態をそろえることは、味の変化を確かめる助けになります。
最後に決めるのは、自分の感性
香りをかいで、ひと口飲み、少し冷めてからもう一度飲んでみる。最初は「好き」「少し苦手」だけでも構いません。慣れてくると、甘さ、酸味、香ばしさ、余韻といった違いを言葉にしたくなります。SCAのフレーバーホイールは、その表現を探す手がかりにもなります。
コーヒーは、知識を増やすほど楽しくなる一方、難しく考えなくても楽しめる趣味です。お気に入りの豆を一つ選び、次の一杯で条件を一つ変えてみる。そこに、自分だけの発見があります。忙しい日に数分だけ手を止めて味わう時間も、コーヒーの魅力なのだと思います。
コメント